ブレザオラの私風

※「ブレザオラ」は牛リブロースの脂を除き、塩漬にしたもの。

ヴァルテッリーナ(※北部イタリアの山岳地方)産で程よく熟成した本当にうまいブレザオラなら、薄く切って手を加えず、そのまま食べなくてはならない。それ自体が持つ激しい香りと、鋭い味を汚すべきではない。
しかしヴァレーゼに住む私の父は、ヴァルテッリーナに寄ってブレザオラを2本買い、ローマに私を訪ねて来る元気が、数年前からなくなってしまった。それ故私はどこにでも売っている、熟成し過ぎたり足りなかったり、硬過ぎたり柔らか過ぎたりするブレザオラを味付けして食べる必要に迫られた。
しかし巷の工業生産的ブレザオラでもうまく調味すると素晴らしい前菜となり、食通の客を欺くことだってできる。
平たい大皿に薄く切ったブレザオラを、それぞれが少しだけ重なるように並べる。皿全体が真紅となるようにする。
ボールにオイルをコップ半分、レモン汁1個分、マスタード大匙1杯、塩、挽き立ての胡椒を入れ、フォークで男らしく、力強くかき混ぜる。本当に男らしくかき混ぜることができる人は数少ない。そして一つかみのパセリを細かく刻み、優雅な仕草でブレザオラに振り掛ける。さすれば本能の命じるままに、ボールの中身もブレザオラの上に撒き散らす。こうしてアラベスク模様の前菜が完成する。 忘れていたが、パセリを刻む時も当然『男らしく』。



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