砂利道を走る自転車のタイヤは、心配になるくらいひしゃげていた。真ん丸い女性の重さで、バランスをとって走るのも難しかった。しかしどうしてもスイカが欲しい。
「チャオ、青二才!」、ミラノ通りで鶏を売る母親の店先にいた若者に、私は喚いた。荷台に女性を乗せて走る姿を見せつけてやるために。
クレモーナのスイカはサッカー・ボールくらい大きくて丸い。濃い緑色をしている。指で弾いてボンゴのような音がすると旨い証拠であり、中は労働者の旗みたいに真っ赤なはずだ。ナイフを入れるとキュッと音をたてて割れる。私は後ろに乗せている女性についても同じことを考えていた。
真っ赤な唇に真白い歯。ゆっくりと広がる微笑みはすでにある種の『約束』だった。私がちゃんと知っているところを指で弾くとボンゴのように鳴るだろう。間違いなく『キュッ』と音をたてそうな雰囲気を持っている。淫らな空想に耽り、汗だくで息を切らせつつもペダルを踏み続けた。スイカのような彼女の身体に欲求をこすりつけながら。
畑の中でスイカを売る小屋に着くまで一言も話さなかった。帰り道でもただ荒い息だけを、汗で光り石鹸の臭いがする彼女の首に吐きかけていた。母親に買ったスイカをハンドルの上に置き、私のスイカは荷台に乗っている。2つとも真ん丸だが、2つの異なる乾きをいやす。
トッリオーネと家を隔てる最後のカーブを曲がり、自転車を倒れるにまかせて北極館の20号室に駆け込んだ。台所のテーブルにスイカを置くと「ずいぶん早かったわねぇ。」と母の声がした。そして幸運にも煙草に火を点けるためのマッチがない。「マッチなら家にあるわよ。」すかさず彼女が言った。しばらくご無沙汰していたスイカを腹いっぱい食べるために、16号室まで彼女と走った。
「今度の休暇はついてるぞ。」などと考えながら壁際を猫のように歩き、20号室へもどる時にはすでに暗くなっていた。闇の中でトッリオーネといちじくの木はさらに黒い染みのように見えた。緊張感の漂う静けさの中、音をたてないよう靴を手に持ち、階段を2段ずつ上がっていった。
家のドアは半分開いており、真っ暗な台所で母が泣いていた。手付かずのスイカが母の前にあった。
スイカのマチェドニア(※イタリア風フルーツポンチ)
唯一健康的なスイカの食べ方は、切り分け、顔をビシャビシャにしながらかぶりつくことだ。この方法は肌にも良いと思われる。
しかし伝統的なスイカの食べ方の1つとして、マチェドニアがある。それを紹介しよう。
家にあるフルーツの残り物を小さく切る(半分だけ残った林檎、へこんだオレンジ、見捨てられた洋ナシなど、2週間前からそこにあり、誰も食べようとしないものが何処の家庭にもあるはずだ)。
皮と種を除き、さいころに切ったスイカをフルーツに加える。言うまでもなくプラムとパイナップルも。これらは好みによって加えるが、ほとんど義務と言っていい。まだ終わった訳じゃない。マラスキーノ酒をカップ1〜2杯、マチェドニアが丁度良い香りを出すくらい。
もし作品を芸術的に仕上げたいなら、小皿に盛り分けた後に、スプレー式の生クリームで飾り付ける。しかしスプレーをその辺に置き忘れないよう気を付けること。私の息子がやるように、あなたの子供もそれをピストルに見立てて遊ぶかもしれない。
材料
各種フルーツ 約1キロ
スイカ 1〜2切れ
白ワイン カップ1杯
プラム 3個
レモン汁 2個分
マラスキーノ酒 カップ1〜2杯
砂糖 大匙2杯
生クリーム
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