第11章 1962年、スウェーデン女の隣で
別荘持つことは素晴らしい。自分が生まれ変わったような気がする。より重要人物になったように思える。「知ってるかい?」ー友達に言うだろうー「俺のミラノの別荘でさ・・・」。『ミラノの別荘』と言う場合、他にも持っていることをほのめかす場合が多い。イタリアのあちこちに持っているんだと。
しかし私にとってはミラノの別荘が唯一のものだった。私の人生で始めて持った別荘。さっそくそこに女を連れ込むとは自分でも驚いた。イングリッド。はたして、いつどこで彼女と出会ったのか。歌謡曲に歌われるように、初めて見た時の彼女がシフォンのブラウスを着ていたかどうかも覚えてない。どっちにしろ、それは大した問題じゃない。なざならイングリッドは裸をこよなく愛した。その通り。私の記憶に生きるイングリッドは、素晴らしい北欧産の胸を2本の矢印のように突き出して、すっぽんぽんで家中を歩き回っている。イングリッド、爪先から頭のてっぺんまでスウェーデン女だった。
「あなた俳優」彼女が言った「簡単に浮気する。私、24時間コントロールする必要ある!」。白状すると彼女の『コントロール』は少し特殊で私にのっかって行われた。私をずっとベッドに繋ぎ止めた。時々彼女はベッドから起き上がり、シャワーを浴びに行った。この道程はイングリッドが私を押し潰しながら、どんな『コントロール」を行ったのかを如実に物語る。掛け布団の下はサン・バビラ広場(※ミラノの中心)より交通が激しかった。
イングリッドはブロック不可能なバスケットのポストマン。常にシュートを決める。いつも好調。むしろ調子はどんどん上がってくる。私を知るものは、このてのことに恐れをなす人間ではないことを理解しているはず。それどころか・・・。しかしイングリッドは日が経つにつれ、その規則性、特に持続性で私を驚かせはじめる。最初のうちは、これが伝説的な『北欧の情熱』というものかと感心していた。しかし何日も続くと、禁断の薬品でも使っているのではという疑問が頭をもたげてくる。なぜなら、この分野では他国民に決してひけを取らない『イタリア男』という誇りを持ちながらも、この調子で続いたら、いずれ私も禁じられた秘薬に頼らざるをえないだろう。イタリア男の名誉は死守しなくてはならないから。
こうしてある日、ことが終わった後、「ちょっと台所で何か飲んでくるわ」と言いながらベッドを離れたイングリッドの後をつけてみることにした。
すると安いキャンティワインの大瓶をラッパ飲みしてる彼女をおどかす結果となった。ワイン!彼女の強精剤はこれだったのだ。たっぷり飲んだ後はベッドに戻り、そして爆発した。
ワイン、そんなことはどうでもよかった。どっちみち掛け布団下のショーを特徴付けていたのは、優美さではないのだから。
翌日の夜、私はベッド脇のナイトテーブルに赤ワインの大瓶を用意しておいた。それを見たイングリッドは貪欲な目で私を見つめ、髪をつかんで私の唇を彼女のそれに近寄せてささやいた・・・「ブタ野郎。
世界の終わり。あなたも経験してみれば分かる。酸っぱいキャンティ・ワインを秘薬とする狂ったスウェーデン女。毎晩大瓶を1本、2本。彼女は飲み、そして私にも飲むことを強要した。夜明けの寝室は居酒屋の臭いに満ちていた。しかも空きビンが増えれば増えるほど、イングリッドのブレーキは外れていく。
その日3回目が終わる頃、すでに完全に酔っているイングリッドは憂鬱と嫉妬が混ざり合った発作に襲われ、私の横面を張り、ひっかき、耳に噛みついた。なんと言ってもあまり北欧らしくない行動だった。
8月のある晩、この冒険物語に突然の終幕が訪れる。オルガニズムの頂点に達したイングリッドが、私の額の真ん中をワインの大瓶で殴りつけた。額が割れ、私は鮮血にまみれた。それでも彼女の発作は収まらず、私の尻を噛んでいる。隙を見て私は警察へ電話した。
彼女と秘薬の大瓶は警官に運ばれていった。階段の踊り場で彼女は警官につかみかかり「豚野郎!!」と喚いた。そして私に向かって「お前も豚野郎だ!!」。
彼女について覚えていることが1つある。尻の左上に赤い小さなあざがあった。よく見るとそれは『ワイン欲しいのあざ』のようだった。
※イタリアでは、何かを食べたい叉は飲みたいという欲求が満たされなかった時に、その食物の形をしたあざが身体に残ると言われている。
ホット・ワイン
誰でもその作り方は知っているだろう。でも私はイングリッドの置き土産としてこれを紹介したい。北欧娘の彼女にとっては、赤ワインに手を加える必要もなく、そのままがぶ飲みしていたとしても。
もしバイエル(※製薬会社)が風邪にきく赤ワインの錠剤を発明していたら、アスピリンよりずっと成功していただろう。風邪からくる咳やその他の症状に、ホット・ワインはいつも最高の妙薬だ。なぜなら実用と楽しみを兼ねている。酔っ払っている内に風邪が直ってしまう。
とにかく、飲みたい量のワインに様々な秘薬(勿論合法的なもの。クローブス、シナモン、ecc.)を加えて火にかける。甘味を加えるためにできれば蜂蜜、なければ砂糖を溶かし込む。熱々を飲むこと。
次のページへ
大食らい表紙へ
執筆、翻訳のページへ
イタリア企画ルーム表紙へ
御連絡、お問い合わせ