ナポリの大晦日

うなぎに始まる大騒ぎ!
 ナポリの大晦日は鰻に始まる。
 イタリアでは古くから大晦日の夜に「チェノーネ」と呼ばれる特別メニューを食する習慣があり、その内容は各地方で異なる。お祭り好きなナポリ人のチェノーネは特に華々しく有名だ。そして殆どの地方では手間のかかる「晴れの日の料理」を準備する習慣がすでに失われているのに、ナポリでは今でも多くの家庭が、きちんと伝統に従ったチェノーネを饗する。全部で13皿、主役は鰻だ。「どんなに貧乏な家庭でも大晦日に鰻を買うお金だけは都合するもんだ」とナポリ人達は言う。それも生きてるやつを買う必要がある。縁起ものなのだから。
 大晦日には親類縁者が集合する。多ければ多いほど良い。みんな大騒ぎを期待している。招待した家のテーブルには、マンマが亭主を怒鳴り散らして買い物に走らせ、全精力を注いで準備した数々の料理がきらびやかに並ぶ。演出効果満点だ。大げさな身振りと最大の賛辞を浴びせつつ招待客がそれぞれの席に着く。さあチェノーネの始まりだ。一皿目を食べ終わる頃には、すでに全員が大声でしゃべり続けており聞いている者は誰もない。夕方から延々と続く食事も「鰻のトマト煮」が出る頃には越境にさしかかる。いよいよ年越しだ。スプマンテが用意されカウントダウンの合唱がこだまする。街中が一体となって叫んででもいるように。「ゼロ」の掛け声と共に室内ではスプマンテの栓が、外では花火が飛び交う。この時外を歩くものは一人もない。危険過ぎる。ナポリでは年が明けたら家にある古道具を窓から投げ出す習慣があるからだ。鍋釜類からテレビ、花瓶、中には冷蔵庫やタンスだって、どんどん道路へ投げ落とされる。同時に花火を、これも窓から打ち上げまくる。
 毎年、元旦のテレビニュースではナポリの年越し騒ぎで死んだ人の数が発表されるが10人以下のことはまずない。


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