各家庭のトマトソース |
| マンマの味のベースはこれだ! |
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トマトの季節がやってきた。7月半ばともなると、ミラノ中の八百屋の店先に真っ赤なトマトの箱が並び、街に彩りを添える。このトマトはサラダ用ではない。細長いサン・マルツァーノも丸いものもあるが、いずれも小振りで肉が薄くて軟らかく、ジュースをたっぷり含んでいる。そして黒み掛かった鈍い光を放つ血のような赤をしている。完熟の極みの色だ。こういうトマトはソース用として栽培され、完熟してから収穫される。生で食べると歯応えがなく今一つだが、煮込むと見事に甘味と旨味を発揮するのだ。 真夏に南イタリアをほとんど徒歩で旅したことがある。強烈な太陽、土埃が鼻をつく田舎道、午後の一番暑い時間になると擦れ違う人もいなくなる。地元の人達は夕方まで家で昼寝でもしているのだろう。道端の、からからに乾いた畑には真っ赤なトマトが光っていた。そんな場面に遭遇した時、イタリア料理で一番重要な食材を漸く感性で捉えることができた。 南イタリアから早朝トラックでミラノへ届くトマトを親父達は大量に買い込んで家に持ち帰る。そしてマンマの出番だ。一日掛かりの大仕事。1年分のトマトソースを仕込むのだから。大鍋で煮込み、ビール瓶などに何十本も詰めて倉庫にしまっておく。イタリアの多くの家庭では、今でもこうしてトマトが一番安くて旨い時期にソースの作り置きをする。基本的には皮のまま煮込んでぐちゃぐちゃに潰し、軽く塩で下味を付け、熱い内に瓶詰し密封する。しかしこの仕込方には各家庭で微妙な違いがある。バジリコ、オレガノ、ペペロンチーノ、人によってはオリーブオイルを加えたり、皮を取り除いたりと千差万別だ。この違いが、家族にとってマンマの味を唯一のものとする。なぜならトマトソースは肉や魚、パスタ料理のベースとなって味を決定するからだ。仕込み方は母から娘へと伝えられていく。こうして家系の味が生き続ける。 |
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