| 乾燥パスタの味の差はどこで決まるのか |
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スパゲティの紀元は13世紀にヴェネツィアから旅だったマルコ・ポーロが中国の麺を持ち帰ったものと、ほとんどのイタリア人は信じている。しかし11世紀にシチリアですでにスパゲティが製造されていたという文献が発見された。紀元1000年前後にアラブ圏から、まずシチリアに伝わり、その後イタリア本土に普及したというのが真相のようだ。 タリアテッレ、ラザニア、オレッキエッテなどの生パスタが家庭や宮廷の調理場で作られてきたのに対して、歴史的により古い乾燥パスタ(スパゲティ、ペンネ、etc)は、少なくともイタリアに伝わって以降は常に工場(古くは工房)で作られてきた。生パスタは麺棒1本あれば短時間で作れるが、乾燥パスタを作るには大掛かりな道具と乾燥に適した気候が必要だったからだ。現在、超近代的な工場で生産されるスパゲティは、原材料である小麦粉から製品になり袋詰め、箱詰めまでの全てがオートメーション化されており、速い工場では3時間でできてしまう。 しかし、ナポリに近いグランニャーノという町で古い機械と製法を用い、3日間かけてスパゲティを作る小さな工場を見つけた。その名を「グランニャーノ・パスタ職人共同組合(COOPERATIVA PASTAI GRAGNANESI)」という。テクノロジーの波が南イタリアにも押し寄せ、乾燥パスタ製造が大工場の専売特許となる以前、グランニャーノは住民の半数以上がなんらかの形でパスタ製造にかかわるという、まさにスパゲティの町だった。古い写真には、町を縦断するメインストリートの両側に並ぶたくさんの竿にスパゲティを掛けて乾燥する風景が見られる。今もこの町には親子代々パスタ製造を営んできた家庭の最後の世代が残っている。その中で、現在出回る大量生産パスタの味に疑問を持つ者が集まって共同組合が生まれた。必要な機械も技術者も、町には全て揃っていた。 スパゲティの生産はとても単純だ。原料となるセモリナ粉(硬質小麦の粉)と水を混ぜてこね、小さな穴から押し出して成型し、適当な長さにカットして乾燥するだけ。ではどこで味の差がでるのか?原料の差はほとんどないと言える。しかし、共同組合のスパゲティと大量生産品を食べ比べると、控えめに言っても新しいチューインガムと15分間噛み続けた後のガム程度の差はある。秘密は乾燥工程にあった。共同組合では摂氏60度の部屋に入れ、乾いた空気を循環させて、丸2日かけて乾燥させる。この間に様々な菌が活動して風味を醸し出すのだ。乾燥し終わる頃には、すでに菌は死んでおり風味だけが残る。それに対して近代的な工場では最高130度くらいまで上げて素早く乾燥させる。高温で乾燥させても罅割れないところがテクノロジーならではなのだが、これでは菌は一瞬にして死んでしまうし、風味が出る暇もない。味に大差がでるのも当然だろう。 この共同組合以外にも低温長時間乾燥で美味いスパゲティを作る小さな工場がイタリアにはいくつかある。本当に美味いスパゲティを食べたい人は探し出して試してみよう。 |
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