カーニバル

豚の血で作るお菓子
一月半ば、早くもカーニバルの浮ついた雰囲気が街に漂い出した。今年の謝肉祭はまだ一ヶ月以上も先だというのに。ショーウインドウには色とりどりの仮装用衣装や仮面、紙吹雪を詰めたビニール袋が並んでいる。中でもお祭り気分を引き立たせるのがカーニバルを象徴するお菓子「キアッケレ」だ。薄く延ばした生地を四角く切ってぎざぎざに切れ目を入れて揚げ、粉砂糖をかけたもので、丸太を組んだ小さな筏に雪が積もったように見える。菓子屋やスパーの売り台に小高く積まれている。イタリア人はそれを見るとカーニバルの楽しさを思い出し、ついつい買ってしまうものらしい。見つけたとたん立ち止まってしばし考え込み、にこっと微笑んでは五個、十個と注文する姿をよく見かける。「キアッケレ」とはおしゃべりを意味する。食べる時の「パリパリ」という音がおしゃべりしているように聞こえるからだ。
カーニバルの起源はキリスト教以前に遡る。古代ローマの農神サトゥルヌスに捧げた収穫祭とルペルカリア祭(豊年祈願祭)を後に一緒にしたものだという。それ故常に農産物や家畜と深く結びついており、屠殺人、サラミ、ハムなどのお祭りでもあった。古くは村で共同の家畜を潰し、特産の野菜と共に料理し、すべての村人が御馳走を食べて祝った。この風習を今に伝えるのが豚の血を使ったナポリ地方のお菓子「サングイナッチョ」である。これもカーニバル時期にはイタリア中の菓子屋で販売される。牛乳、豚の血、片栗粉で作るどろどろのクリームをビスキュイやリングア・ディ・ガット(猫の舌の意味)と呼ばれる薄いビスケットですくって食べる。残念ながら、現在では衛生法で血液を使用、販売することが禁じられており、代わりにチョコレートを入れている。
しかし、ナポリへ行き肉屋に小声で頼むと今でも豚の血を売ってくれるらしい。昔通りのサングイナッチョを作る家庭も少なくないという。


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